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執筆者の写真Takumi Tsukudate

まっすぐなものを。

2019年4月。 僕は大学生になった。 大学生になり、ものを作ることが増えた。いや、増えたというよりかは「大学生になってから、ものを作るようになった」というほうが正しいか。大学生になった僕はこれまでまったく縁のなかった「ものづくり」にどっぷりとハマっていた。映像制作、写真撮影、デザイン制作、時には本を作ったり、イベントを開催したり。

どれもまっすぐな気持ちで向き合ってきたつもりだ。 いつもそばには尊敬する先輩がいて、僕を指導してくれていた。ずっとその人の背中を追いかけながらものづくりをしてきたが、年が経つにつれて、少しずつ僕だけで作るものも増えていった。

2022年3月。 その先輩と一緒に映像制作をした。 僕が所属するサークルの卒業生を送り出すための映像で、先輩と初めての共同制作だった。先輩は文章以外のものづくりをするのはこれで最後だと言って、それから文章執筆に本腰を入れ始めた。先輩の中でも僕の中でも、自分がものづくりをすることに一区切りがついた制作だった。

そしてその日から先輩の手を離れてのものづくりが始まった。誰かと協力してものづくりをするのは当たり前のことだが、制作を通しての人との関わりかたや、技術の施し方を手取り足取り隣で教えてくれる先輩はもういない。一人でものづくりをするような不安感があった。それでも、僕に仕事をくれる大人や一緒に何かを作ろうと言ってくれる人はたくさんいた。また、僕自身もたくさん作りたいものがあったので、たくさんの制作を行ってきた。

今年の夏。 MVを作った。 桜川ゆいはという大学の友人のMVだった。彼とはこれで3度目のMV制作となった。そしてその映像は、ゆいはさんが関わることの多い、ヤンサン映像研究部が主催する上映会で上映された。

僕は現地に足を運び、自分の映像が人の目にどう映るかを確かめることにした。上映会にはたくさんの人が訪れていた。多種多様な映像が軒を連ねていた。そんな中で僕が作ったMVが上映される。一人で制作を始めてからは、自分の作品が人の目に触れる場に居合わせたのは初めてだった。いつもSNS展開止まりだったので新鮮な気持ちでスクリーンを前に自分の映像が流れるのを待った。

僕の映像が流れ、少しばかりの感想戦が終わり僕は自席に戻った。とても恥ずかしい気持ちに襲われていた。もちろん映像は自分の作ってきたものの中では最高のクオリティだったように思う。それでも恥ずかしかった。なぜなのかすぐにはわからなかった。

それからもたくさんの作品が上映された。プロからアマチュアまでいろんな人が作った映像たちだったが、どれもこれも一貫したテーマが設けられていて、素敵な作品ばかりだった。

もちろん僕のMVにもテーマはあったが、そのテーマに合った映像を作れたかと言われるといまいちな気がしたし、とってつけたようなテーマだった。きっとその中身のなさが映像から露呈していて、それをこの場にいる人たちに見破られたような気持ちになり一人恥ずかしく思っていたのだろう。

まっすぐさが足りないように感じた。いや、確実に足りていない。僕の作る作品にはまだまだ若いがゆえの自己陶酔がふんだんに現れているように感じた。そうだ。たしかに現場にいた人たちの中で僕はダントツで若かった。まだまだ僕の作品は若くて、青々しかった。必ずしも悪いことではないだろう。でも、それでも、もっとまっすぐに表現できたはずだ。いつの間にか伸びていた鼻が折られたような気持ちだった。さらには、伸びた鼻に気がつけない自分の恥ずかしさにも直面した。僕はその後の交流会を辞退し、重い足取りで帰路についた。

そんなできごとから一週間が経った。まっすぐなものを作り続けるしかない。素直にものを作るしかない。「若い」象徴である学生時代は残り半年を切った。作るしかない。最後に、自分にとって最高の作品を。青々しさは抜けないかもしれない。自己陶酔作品になるかもしれない。それでも作り続けて、考え続けなければならない。作りながら悩むしかない。

大学生のものづくり、最後の締めにショートフィルムを撮ろうと思います。今回は独自で上映会も主催するつもりです。楽しく最後にでけえ作品作ってやろうじゃないのと自分自身に挑戦する気持ちです。

作品を上映したとき僕は何を想うのか。 まっすぐな作品を作ることはできるのか。 学生生活も残りわずか。成し遂げて終わりたい。何かを。

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