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執筆者の写真Takumi Tsukudate

どうでもいいことなんだけどさ

「どうでもいいことなんだけどさ」が増えた。

最近、人と話すときにどうしても前置きとして「どうでもいいことなんだけどさ」と言ってから自分のことを話すようになった。自分が話すことなんて相手にとってどうでもいい。そう思うようになってしまったのは大学生になってからかもしれない。

僕は二年遅れて大学生になった。それもあってか、周りは優秀な人で溢れているように感じてしまう。実際はそんなことはなく、みんな僕と同じことを考えているのかもしれないが。僕が二年かかって入学した大学に、多くの人は1浪以内で入学している。それだけで僕は周りの人たちを尊敬している。そんなこともあってか、自分の話すことなんて相手にとってはどうでもいいことなんだろうなと考えるようになってしまった。会話の始まりには「どうでもいいことなんだけどさ」をつけるようになった。

勇気を振り絞って「どうでもいいこと」を話したときに「本当にどうでもいいな」と言われたときの悲しみたるや。もうこの人には、どうでもいいことを話すのは止めようと誓う日々。

僕はどうでもいいことが大好きだし、どうでもいい会話が大好きだ。


ある日の夕方、友人と映画を見に行った帰り。この日の会話は至極どうでもよく、とても大好きな会話で僕の記憶に鮮明に残っている。

「今日空のグラデーションめっちゃ綺麗じゃない?」と僕は空を見上げた。「ほんとだ!綺麗!」彼女も僕の言葉につられて空を見上げた。 「一番星ってやつだね」 「一番星ってあれなの??」彼女は疑うようにその大きな瞳で僕を見つめた。 「え、あれじゃない?だって、最初に空に出る星でしょ?」 「え!一番星ってそういう意味なの!?」彼女は大きな瞳をより一層大きくして驚いていた。 「一番明るい星だと思ってた?」 「うん」 「待って、俺が間違ってるかも」僕はポケットからスマホを取り出し、電源をつけ検索エンジンに「一番星」と入力した。

「一番星って金星のことらしいね」 「え!金星だったの!」彼女は急に声を大きくし驚いた。なんだか僕まで素晴らしい発見をしたような気持ちになる。 「夕方か明け方にしか見えないんだってさ」 「え!そうなの!」 「確かに、夜になったら星がたくさんありすぎて、どれが一番か決められなさそうだよね」 「夕方じゃなかったら消えるってこと?自転的なやつなのかな」彼女は金星に興味津々である。 「そうなのかもね。ずっと見てたら消えるんじゃない?」 「急に消えるのかな!?」 「きっとじわっと消えるんだよ」 夕方、グラデーションのかかった空に浮かぶ金星はとても綺麗でいつまでも見ていたいと思った。


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